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世界最高額のダイヤモンド~センティナリーダイヤモンド~

世界一美しいダイヤモンドといわれるセンティナリー・ダイヤモンド。世界で3番目に大きなダイヤとされており、無色透明で外見・内部ともに傷が無い希少価値の高いダイヤです。公的な価格はわかっていませんが、保険金だけで1億ドル、日本円にして約110億という破格の額となっています。

ここでは世界一と称されるセンティナリー・ダイヤモンドについてまとめました。類を見ないほどの多面カットが施され、その美しさを不動のものとしているセンティナリー・ダイヤモンド。特徴やカッティング技師、所有している企業、公開されるまでの歴史を紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

目次

1.世界一のダイヤモンドとは?最大のダイヤモンドと最高額のダイヤモンド

センティナリーダイヤモンドの画像
世界最大のセンティナリー・ダイヤモンド

ダイヤモンドには色々な世界一があります。史上最大のダイヤモンド原石「カリナン」、世界最大の研磨済みダイヤモンド「ザ・ゴールデン・ジュビリー」、そして世界最高額のダイヤモンドと言われているのが「センティナリー・ダイヤモンド」です。

このセンティナリー・ダイヤモンドは、Dカラー・FL(フローレス)では世界最大(273ct)の研磨済みダイヤモンドで、何と保険会社の保険掛け金額が1億ドル(100,000,000$)であったというから驚きです。当時の為替レート、1ドル=125円で換算すると、なんと125億円にもなります!

ちなみに「センティナリー」にはラテン語で「100」の意味があり、1988年当時、ダイヤモンドの大企業として知られるデビアス社の100周年記念事業として研磨されたことから名づけられました。

2.ダイヤモンド史に名を刻むトルコウスキー一族の足跡

この世界最高額の「センティナリー・ダイヤモンド」と、545.67カラット(約109g)もある世界最大の「ザ・ゴールデン・ジュビリー」の研磨には、ともにある一族が参加しています。

それこそが、ダイヤモンドの歴史を語る上で欠かすことができない、ベルギーのトルコウスキー一族です。18世紀に初代のアブラハム・トルコウスキーがベルギーのアントワープで宝石業をはじめ、20世紀初頭には、ダイヤモンド研磨職人であり数学者でもあった四代目のマーセル・トルコウスキーが、史上最も美しいカットと言われるアイディアルラウンドブリリアントカットを発案し、宝石界に革命を起こしました。

その後もトルコウスキーの名はダイヤモンド界で重要な地位に立ち続け、センティナリー・ダイヤモンドとゴールデン・ジュビリーのプロジェクトチームには、後のエクセルコダイヤモンド創業者であり、当時若干20歳だった七代目のジャン・ポール・トルコウスキーが、デビアス社の研磨部門で最高責任者だった父の六代目ガブリエル・トルコウスキーとともに加わっています。

3.名門一族の系譜を継ぐカッティングブランド

4Cのうち唯一、人間の手によって価値が定められるのが「カット」です。トルコウスキー家は、このカット技術を追求することで、ダイヤモンドに輝きという真の価値を与え続けてきました。

ジャン・ポール・トルコウスキーが創設したダイヤモンドブランド・エクセルコ ダイヤモンドのカット工程は、熟練工が通常の4倍もの工程をかけ、全ての作業で正確性を保つための精密な検査を行うなど、一切の妥協を許しません。

4C鑑定でも、エクセルコのダイヤモンドはカット評価の最上位であるトリプルエクセレントを常とし、名門トルコウスキーの名に恥じぬクオリティを貫いています。

4Cについて詳しくはこちら>>

品質を決めるもうひとつの評価基準「輝き」についてはこちら>>

4.デビアス社とは

ダイヤモンドの採掘は世界各国で行われていますが、売買を行う企業自体は多くはありません。企業数の少ないダイヤモンド流通の世界において、大部分を占めているのがデビアス社です。ダイヤモンドの採掘や流通、加工を行っている大企業で、南アフリカ共和国に本社を置いて世界各国に店舗を構えています。

4-1.デビアス社の歴史

デビアス社は1880年にセシル・ローズが「デビアス鉱業会社」として立ち上げた会社です。世界中のダイヤモンド鉱山を次々買収していき、全世界のダイヤモンド流通の90%を独占していたとされています。その後ダイヤモンド生産者組合とダイヤモンド貿易会社を設立し、自分たちで生産調整と一括買い上げを行うことで値下がりを防ぐ仕組みを作りました。オーバーなほどダイヤモンドが市場に出回ることを防ぐ仕組みのおかげで、ダイヤモンドは極端に値崩れすることなく、現在でも価値を保ち続けています。

デビアス社が市場流通量のコントロールを行った結果、「ダイヤモンドの価値はどんどん高まるもの」というイメージが世界中に浸透。

デビアス社を通じてしかダイヤモンドを入手できなかった状況は、世界中でプレミア鉱山がいくつも見つかったことで変わりました。しかし現在でも圧倒的に有利な仕組みは残っています。そのため、現在もデビアス社はダイヤモンド業界において重要な立ち位置を保っているのです。

4-2.ダイヤモンド界の巨人、デビアス社の戦略とは

ダイヤモンドの生産量は1800年代後半から1900年代にかけて大きく増えました。そのため乱売が多くなり、ダイヤモンドを採掘する業者の経営が危ぶまれるように。デビアス社ではダイヤモンドが値崩れすることを懸念し、価値を維持するための仕組みを作りました。

ダイヤモンドの量が多くなりすぎないように生産調整を行い、過剰に出回らないようにしています。加えて生産されたダイヤモンドをすべて買い取り販売して価格のコントロールも行いました。「ダイヤモンドは永遠の輝き」という有名なキャッチコピーを発表することで、ダイヤモンドに付加価値をつけて憧れの宝石というイメージをつける戦略も。また競争が起こらないように自らダイヤモンド生産者組合とダイヤモンド貿易会社を設立し、それぞれに違った量の原石を割り当て流通させるようにしました。こうしてダイヤモンド業界をコントロールしながら高いシェアを獲得することを実現。現在でもデビアス社一強の仕組みが継続されています。

5.センティナリー・ダイヤモンドの歴史

5-1.センティナリー・ダイヤモンドの発見(1986年7月17日)

プレミア鉱山にてX線装置を用いて発見されたセンティナリー・ダイヤモンド。その存在は採掘に関わったわずかな人のみに知らされ、秘密を守るように箝口令がしかれていました。採掘された原石は599カラットと大きく、1点に突出した細長い形の角や大きい面の平らな部分にある深いくぼみは不規則なマッチ箱を連想させたそうです。その不思議な形状はカットすることの困難さを示していました。

5-3.センティナリー・ダイヤモンドの発表(1988年3月11日)

キンバリーで開催されたデビアス社の100周年記念式典には、多数のダイヤモンド生産国の政府や市場の歴代党首を含む400人ほどの観衆が参加。この式典で、センティナリー・ダイヤモンドは初めて人々の目に触れることとなりました。議長のジュリアン・オーグルヴィ・トンプソンが歓迎のスピーチでセンティナリー・ダイヤモンドについてこう述べています。

「我々はプレミア鉱山で 599 カラットもの大きさ、かつ完全なカラーのダイヤモンドを発見しました。今まで見つけられた中で最も大きい最上級のダイヤモンドの一つであり、当然、このダイヤモンドは、センティナリー・ダイヤモンドと呼ばれるにふさわしいでしょう」その予期していなかった言葉に観衆は不意を打たれたそうです。

センティナリー・ダイヤモンドの発見はデビアス社の100周年記念にふさわしいもので、プレミア鉱山以上の発見はこのほかに無かったとされています。鉱山ではその後もカリナンやニアルコス、テイラーバートンなどの価値ある宝石が長い間生み出されました。プレミア鉱山自体は、100カラット以上の重さの石を約300個、また世界のダイヤモンド生産量の1/4に値する400カラット以上ものダイヤモンドを生産しています。しかし、センティナリー・ダイヤモンドの原石より大きい品質の宝石は、19個しか見つかっていません。

5-3.センティナリー・ダイヤモンドの加工チーム発足(時期不明)

センティナリー・ダイヤモンドを評価するために、最高責任者としてデビアス社のガビ・トルコフスキーが選ばれました。彼が初めてセンティナリー・ダイヤモンドを見た時、これまでにない輝きに大変驚いたそう。「通常、ダイヤモンドの色を評価するためには、ダイヤモンドをよく見て観察する必要がありますが、これは、ただただその美しさが表面から現れています。これは非常に珍しいことです」と述べています。

類を見ない大きさのセンティナリー・ダイヤモンドは価値が高く、カットには深い専門知識と投資が必要でした。一般的にダイヤモンドは2~3通りの形にカットできますが、センティナリー・ダイヤモンドは形状が複雑であるがゆえに、何通りもの可能性が思い浮かんだと言います。

難しいカッティングを施工させるため、トルコフスキーは1988年の終わりにマスターカッターであるジェフ・ウォレットとジム・ナッシ、技術者、電気技師、警備員からなるチームとともに、ヨハネスブルグにあるデビアスダイヤモンド研究所で特別に設計された地下室でカットを行うことになりました。機械振動と温度変動を抑え、カッティングに与える外部の影響を最小にする強度と安定性を兼ね備えた、センティナリー・ダイヤモンドをデザインするためだけの特別室です。そこで1年もの間原石を調べつくし、あらゆる亀裂や割れ目を知り尽くすまでになりました。最新の電子機器を使用し、結晶構造の深部まで把握していたそうです。

5-4.センティナリー・ダイヤモンドの加工(1991年1月)

ダイヤモンドを研磨する前に手作業で切り目を付け、154日かけて邪魔になってしまう50カラット分をカット。重さ約520カラットの大きな結晶を残し、カットの形状を決めるために測定とスケッチを繰り返しました。研磨を行い、1991年1月に大まかな形が完成。重さ273.85カラット、さらにクラウン部に164面、ガードル部83面ある合計247面をもつダイヤモンドとなりました。ここまで多くの面を持つダイヤモンドはこれまでなかったとされています。

センティナリー・ダイヤモンドは世界最大のモダンファンシーカットのダイヤモンドとなりました。さらに、古くから伝わるkerfing(切り口をつける)という手法とレーザ加熱といったテクノロジーの両方を組み合わせた唯一のダイヤモンドともいわれています。こうして1年以上をカットと磨きに費やした最高ランクのダイヤモンドが完成しました。

5-5.センティナリー・ダイヤモンドの公開(1991年5月)

センティナリー・ダイヤモンドはGIA(米国宝石学会)のカラーグレードで最高等級となるD(無色)に位置づけられています。この素晴らしい宝石は1995年5月、初めて世界に公開されました。当時デビアス社の副会長だったニコラス・オッペンハイマーは「誰がこの石に値段を付けられるでしょう?」とコメントしています。公的に価格を付けられたことはありませんが、公開の際は保険金として1億ドルがかけられていたそうです。2007年時点ではブルネイ王室に寄贈されており、今尚その輝きが大切に守られています。

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